体験型ドラマとしてヨーロッパで異例の大ヒットした『スカム・フランス』が日本についに上陸した。
もともと『スカム』は、ノルウェーの国営放送局NRKが若者向けに低予算で制作したドラマだ。とある高校を舞台にした群像劇は、LGBTQや人種問題、いじめなど現代人が直面している問題を、若者の視点からリアルに描き出す画期的なドラマとして大ヒット、若者だけでなく大人たちにも注目された。北欧だけにとどまらないその人気を受けて、アメリカ、イタリアなどでも制作されたが、なかでも評価の高い『スカム・フランス』の『エピソード:リュカ』と『エピソード:イマネ』の各10話が日本でも配信がスタートしている。
厳格なキリスト教の家庭に育ったリュカ(アクセル・オーリアント)は、転校生のエリオット(マクソンス=ダネ・フォーヴェル)に惹かれている自分に気づき、困惑する。彼女がいるエリオットと急接近するが、周囲にゲイだと思われたくないリュカは、友人の宅で開かれたパーティで知りあったクロエと付き合っている振りをする。本心を打ち明けられないリュカに、ルームメイトたちはそれぞれの反応を見せるーー。
『エピソード:リュカ』のテーマは、セクシュアリティの目覚めだ。ルカ・グァダニーノ監督によるヒット映画『君の名前で僕を呼んで』(18年)で描かれたような、初めての恋に揺れる心の揺れが繊細に描かれる。
リュカが送っている高校生活を取り巻く人間関係は、社会の縮図でもあり、ダイバーシティ(多様性)社会だ。『エピソード:イマネ』は、リュカの仲間のひとりで賢いイマネにフォーカスした物語だが、アフリカ系移民でイスラム教徒の彼女を通して、人種や宗教の問題が、友情や恋に与える影響が描かれる。
リュカやイマネが直面する問題は、それぞれ個人な物語をもつ一方、群像ドラマとして描くことで、さらにテーマを多角的に掘り下げることに成功している。同級生やクラスメイトといった気のおけない仲間うちで交わされる議論や言葉はそれぞれ一家言あって、なるほど、とついうなずいてしまうほどだ。誰もが共感をもって“自分ごと”として感じられることが、このドラマに多くの人がハマる最大の理由だろう。
ちなみにキャストは、ほどんど無名のフレッシュな役者が起用された。リュカが暮す共同アパートに転がり込んでくる心優しいマノンを演じるマリリン・リマは、本ドラマが放映中に撮影した映画『マーメイド・イン・パリ』(20年)に主演し脚光を浴びたが、他のキャストも個性的な実力派揃いなだけに今後の活躍も楽しみだ。
●監督/デビッド・ホレーグ
●出演/アクセル・オーリアント、マクソンス=ダネ・フォーヴェルほか
●2018年、フランス
●楽天TV配信中、Amazon、Huluほか各プラットフォームにてレンタル配信中
©GÉTÉVÉ PRODUCTIONS DÉPÔT LEGAL 2018 UNE SOCIETE DU GROUPE BANIJAY
https://www.presidio.co.jp/lp/skamfrance
文:立田敦子