1991年に62歳で他界したフレンチ・ポップス界のカリスマ、セルジュ・ゲンズブールの没後30周年を記念して、彼の監督作『ジュテーム・モア・ノン・プリュ』が4K無修正版でスクリーンに復活する。
トラックでゴミ回収をして生計を立てているポーランド出身のクラスキー(ジョー・ダレッサンドロ)とイタリアからやってきたパドヴァン(ユーグ・ケステル)。ふたりはカップルなのだが、ある日、カフェで働いているジョニー(ジェーン・バーキン)とクラスキーが親密になったことで、危険な三角関係に発展していく。
1969年に当時の恋人ジェーン・バーキンとのデュエットでリリースしたヒット曲「ジュテーム・モア・ノン・プリュ」のタイトルを冠した本作は、ミュージシャンとしてだけでなく作家、映画監督とマルチに活躍したゲンズブールがフランスの伝説的作家ボリス・ヴィアンに捧げた作品。ヌーヴェル・ヴァーグやアメリカン・ニューシネマからの影響も感じさせる本作は、社会から疎外されたマイノリティたちの物語であり、LGBTQやダイバーシティといった今日的なテーマを内包している。いま見返しても“おしゃれな恋愛映画”以上の衝撃とパワーを持った無骨な作品だ。
劇中でも、クラスキーが少年だと勘違いするように、バーキンは長い髪をバッサリ切り、タンクトップとジーンズというボーイッシュなスタイルで登場する。ブリジット・バルドー(ちなみに、ゲンズブールの元カノで、当初、ゲンズブールは「ジュテーム・モア・ノン・プリュ」をバルドーと録音している)のようなグラマラス女優が全盛期に、胸も小さい少年のような体型のバーキンを新しいスタイル・アイコンに押し上げたゲンスブールのプロデューサーとしても手腕も感じられる。
●監督/セルジュ・ゲンスブール
●出演/ジェーン・バーキン、ジョー・ダレッサンドロ
●1975年→2019年、フランス映画
●配給/セテラ・インターナショナル
●新宿K's cinema、立川シネマシティほか全国公開中
©1976 STUDIO CANAL - HERMES SYNCHRON All rights reserved
http://www.cetera.co.jp/jetaime4K/
文:立田敦子