かつては売れっ子のイラストレ―タ―だったヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は、デジタル化された社会の変化についていけず、連載していた新聞の風刺画も打ち切りになった。妻マリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放され、アパルトマンを追い出された彼は、息子から、冴えない毎日を送る父親を元気づけようと贈られた「タイムトラベルサービス」を申し込む。それは、客が望む時と場所をまるで映画のようなセットと俳優たちによって再現してくれる、新しい“体験型エンターテインメント”だった。ヴィクトルは、運命の女性と出会った1974年5月16日のリヨンのカフェをリクエストするが――。
『ベル・エポックでもう一度』は、「あの頃に戻りたい」誰もが一度は抱いたことがあるであろう願望を軸とした、夢と懐かしさが入り混じった、滋味深い人間ドラマだ。
人生に行き詰まった中年男が過去と再び出会うことで、人との出会いの意味を文字通り再確認し、人生を取り戻していく様を、真実味をもって演じたのはフランスの名優ダニエル・オートゥイユ。人生を貪欲に楽しもうとする活力溢れる妻マリアンヌを、『8人の女たち』などで知られる大女優ファニー・アルダンが演じている。
二大俳優の共演でも注目された本作は、本国フランスで大ヒットし、フランスの権威ある映画賞セザール賞で助演女優賞(アルダン)、オリジナル脚本賞、美術賞の3冠に輝いたが、ヴィクトルが“タイムトラベル”する70年代の街やファッション、フレンチポップスなどヴィジュアルや音楽にも注目したい。
●監督/ニコラ・ブドス
●出演/ダニエル・オートゥイユ、ギョーム・カネ、ドリア・ティリエ、ファニー・アルダン
●2019年、フランス映画
●配給/キノフィルムズ
●シネスイッチ銀座ほか全国公開中
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文:立田敦子